「レズビアン(女性同性愛者)だから狙われないように気を付けろよ」
私のいない場で、私の女友達がそう『警告』されていたことを知った時、一瞬頭が真っ白になったことを覚えています。
私は彼女に「ノンケ(異性愛者)だよ」と、笑いながら伝えたものの、心の中は「レズアビンというだけで、女であれば誰でもいい」と思われてしまうことへの違和感でいっぱいでした。
無勉強ゆえに生まれる『言葉』
2015年に渋谷区が結婚に相当する関係を認める証明書を、同性パートナーに発行する制度を開始したことを皮切りに、メディアでもLGBTに関する話題がたびたび取り上げられるようになりました。
LGBT:レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーのそれぞれの頭文字をとった表現。
しかし、どんなに話題に上がろうとも「自分には関係ないことだ」と情報をシャットアウトしてしまっている人は一定数います。
「身近にLGBTの人がいないから」「自身がマジョリティ(社会的多数派)にいるから」などといった理由があるのかもしれませんが、公言していないだけで、身近なところにLGBTの人たちがいる可能性は考えられます。
LGBTに対して『無関心』であるがゆえに、相手の心に影を落とす言葉を悪気なく発してしまう場合もあるのです。
私自身がいわれた『言葉』はもちろん、ほかにどんな言葉があるのか…ゲイやレズビアンの人にインタビューしてみたところ、こんな答えが出てきました。
「もったいない」といわれた、20代のレズビアンの人
そう答えるのは、レズビアン(女性同性愛者)であることを周囲に公言している20代の女性。
「もったいない」という言葉は、役に立つことを無駄にしている状況でいわれるものです。しかし、彼女の場合は何を無駄にしているというのでしょうか。
それはいった本人にしか分からないことですが、彼女自身は「もったいない」といわれた背景をこう考えていました。
「ノンケ(いわゆる異性愛者)の基準に当てはめているから、出た言葉なのでは」
それは本当に『理解』といえるのか
両親に性的指向を伝えた時、大激怒されたというゲイ(男性同性愛者)の男性。なかなか理解を得られず、自宅に閉じ込められたこともあるといいます。
そんな中でも、唯一理解を示してくれたのは姉でした。
しかし、その後、姉は体裁を気にして「夫には秘密にしたい」と彼に告げてきます。「隠したい存在」といわれたも同然の言葉に、彼は「きつかった」と当時の心境をもらしました。
『かたよったステレオタイプ』がもたらした言葉
世の中にはさまざまなステレオタイプがありますが、LGBTも例外ではありません。むしろ画一的に「こういうタイプだよね」と、決めつけられてしまう傾向にあるといえます。
よく聞くものでは「ゲイの人はみんな『オネエ』っぽい」「レズビアンの人はボーイッシュ」など。
今回のインタビューで「○○ぽくない」という言葉をあげたレズビアンの人は、この言葉を「かたよったステレオタイプ」からくるものだと分析します。
また、「自分にとっての『普通』を前提にしないで」と語ります。そして「否定から入らないで」とも。
「ゲイだから」「レズビアンだから」といった理由で、相手を否定することはナンセンスの極み。「1人の人間」として向き合えば、性的指向は関係なくなるのではないでしょうか。
誰でもいいわけじゃない
新宿二丁目のゲイバーで働く男性スタッフさんによると、何かを伝える前にノンケの男性客が「無理だから」と線引きすることはたまにあるのだそうです。
ここでいう「無理」は「恋愛対象として見られること」を意味しているのですが、それはあまりにも図々しい勘違いといえます。
見た目や性格など、人を好きになる上で『好み』があるのは、ゲイの人にとっても同じことなのです。
決めつけないで
こうした言葉を例にあげて「差別だ」と問い詰めたいわけではありません。
人によって言葉の受け取りかたは千差万別。もちろん配慮は必要ですが、今回インタビューに答えてくれた人たちはみんな、口をそろえて「興味をもって聞いてくれる分には、かまわない」といっていました。
むしろ性的指向を公言した時に「そうなんだ」と流されると、肩透かしをくらった気分だという人も。
そんな中、特に印象に残ったのはこの言葉でした。
「性的指向に限らず、誰でもマイノリティ(社会的少数派)の部分があるはず。それについて、どう思うかを考えたらいい」
信仰や人種はもちろん、突き詰めれば趣味や価値観まで、人は違う部分があって当たり前です。
自分が相手と違う部分が話題に上がった時、あなたならどうするでしょうか。そして、相手からどんな言葉を投げかけてほしいですか。
たとえLGBTの人が身近にいなくとも、自分自身に置き換えて考えてみたら、自然と答えは出てくるはずです。