「保毛尾田保毛男」騒動も徹底討論 AbemaTV流のニュースの伝え方
 稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんらによる「72時間ホンネテレビ」で話題のAbemaTV。音楽、ドラマ、アニメ、ゴルフなど、約25のチャンネルがあるこの放送局を、名だたる人物が「勝負」の場に選ぶ下支えとなっているのが、「報道」だ。







 AbemaTVの報道が注目されたのは、開局からわずか3日後に起きた熊本地震。テレビ朝日の特別報道番組を同時放送したほか、独自の緊急特番を組んで、24時間体制で最新情報を伝えた。停電していても屋外でも情報が入手できる、と重宝がられた。現在は「報道ステーション」などテレビ朝日の主要な報道番組を地上波の放送終了後に放送するほか、オリジナルコンテンツも制作している。



 衆院選直後の10月25日、平日夜21時から放送の看板番組「AbemaPrime(アベマプライム)」のスタジオを訪ねると、一角に、パソコンとスマホを両目で追う3人の女性たちがいた。番組に寄せられるコメントをリアルタイムでチェックし、「#アベプラ」のハッシュタグの付いたツイートを番組公式ツイッターで次々にリツイートしていた。プロデューサーの植村俊和さん(39)いわく、SNS上では「常連さんのコミュニティー」が出来上がっているという。



「スタジオの議論を深めるために、あえてハレーションが起きるようなコメントを紹介することもあります。SNSとジャーナリズムをいかに近づけられるかが、われわれの課題ですね」(植村さん)



 出演者もスタジオにパソコンやスマホを持ち込んで、本番中にSNSを更新していた。



 番組で取り上げるテーマも、ネットに精通した20縲?30代に刺さるようなものが多い。この日は「AI×報道の未来は?」と題し、記者ゼロの通信社「JX通信社」の衆院選情勢調査について特集。SNS上の事件や事故に関連する投稿をAIがチョイスし、プッシュ通知でニュースを配信する同社のサービス「FASTALERT(ファストアラート)」の情報をもとに、ディレクターが兵庫県明石市で起きた火災現場に飛んでリポートした。



 番組のキャッチコピーは「オトナの事情をスルーする」。曜日ごとに決められたテーマには「炎上上等」「聖域なし」など刺激的なフレーズが並ぶ。AV女優や元暴力団組織の長をコメンテーターに起用していて、既存メディアなら躊躇しそうだ。前出の植村さんがキャスティングで重視するのは、



「とかく難しくなりがちなニュースを自分の言葉で語れるか」



 最近では、フジテレビで問題になった「保毛尾田保毛男」騒動をLGBT当事者と話し合うコーナーに1時間半を費やした。白熱すれば番組の尺を10分延長することもある。「ディスカッション」はそれくらい、重視している要素。番組開始当初から出演する元NHKアナウンサーの堀潤さん(40)も言う。



「徹底的に議論できるのがアベプラの魅力です。『偏向報道』『一部を切り取っている』などマスコミに向けられた不信感を払拭するには、多角的に報じるための十分な尺と、活発なディベートしかないと感じています」



 インターネットテレビには放送法は適用されないが、基本的にはテレビ朝日の基準に基づいた番組づくりをしているという。
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