◇生活、さまざまな不利益 法整備願う、式決意のカップル
今春、1組のレズビアン(女性同性愛者)のカップルが、東京ディズニーシー(千葉県浦安市)内のホテルで結婚式を挙げる。会社員のひろこさん(35)と、パートの東小雪さん(28)。大好きなミッキーマウスの祝福を受け、式の後にはともにウエディングドレス姿で園内をパレードする。その日を思い浮かべながら、一緒に式の準備をする時間が、2人にはいとおしい。
日本では法律上、結婚できるのは男女のカップルだけ。婚姻届は出せず、式はセレモニーに過ぎない。それでも2人が式にこだわるのには理由がある。
東京都内で一緒に暮らし始めて1年になろうとしていた昨年春、小雪さんがインフルエンザをこじらせ発作を起こした。救急車を呼んだひろこさんは、駆けつけた隊員に聞かれた。「お友達ですか」
「はい」と答えれば、付き添いを断られるかもしれない。でも、パートナーだと言えば救急隊員は混乱するだろう……。とっさの判断でうそをついた。
「姉です」
法律で夫婦と認められない同性カップルには、「結婚」生活を営む上でさまざまな不利益が生じる。給与の家族手当や、税の配偶者控除は受けられない。財産の相続も、生命保険の受け取りもできない。パートナーが事故に遭った時、医療行為への意思決定に関与できない。個人情報の保護を理由に、病状さえ教えてもらえないこともある。苦肉の策として、年下の人が年上の人の養子になる形で法的関係を結ぶカップルもいる。
ひろこさんとの関係について親の理解を得られていない小雪さんは、式を挙げると決めた後「もしもの時は財産をすべてひろこさんに渡してほしい」と遺言を書いた。
ディズニーシーで式を挙げれば、従来考えられていなかった「女性と女性の結婚」を、多くの来園者が目にすることになる。「私たちの結婚式が、同性カップルの法的保障に光が当たるきっかけになれば」と、2人は願う。
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同性カップルの結婚(同性婚)は01年、オランダで初めて認められた。結婚に近い制度を持つ国も合わせると、今では20カ国を超えている。欧米では、他人の生き方の自由を尊重する土壌があり、受け入れやすいようだ。
日本でも、同性愛者らでつくる「特別配偶者法全国ネットワーク」が、国に法的保障の充実などを求めてはいる。だが、法整備が動き出すまでの盛り上がりはまだない。