ゲイやレズビアンなど「性的少数者」の社員が働きやすい環境づくりに取り組む企業が増えてきた。職場で性的志向を隠すというストレスをなくし、仕事に前向きになってもらおうとの狙いだ。同性愛のカップルに結婚祝い金を出すケースも出ている。
性的少数者はレズビアンやゲイ、バイセクシュアル(両性愛)、生まれつきの性別に違和感を持つトランスジェンダーなどさまざまで、頭文字を取って「LGBT」と総称される。7万人を対象に、電通総研が2012年にまとめた調査では、成人男女の約5・2%に上るという。
日本IBM(東京)は2004年にLGBTの社員らが委員会をつくり、職場環境の改善を議論。メールでの相談受け付けや、社員を対象にした勉強会などを行ってきた。
11年からは、同性愛のカップルにも結婚祝い金を支給。すでに10組近くが申請した。今後は、転勤でカップルが別居する場合に手当を出すことも検討するという。
外資系金融機関のゴールドマン・サックス証券(東京)でも、同様のグループが活動。男性社員(37)は3年前、ゲイであることを職場でカミングアウト(公表)した。「職場に理解があり、同性の恋人がいても隠す必要がない。ストレスなく働ける」と話す。
このグループの発案で09年から毎年、LGBTの学生を対象にした会社説明会を開催。12年秋には40人以上が参加した。まだ参加者が入社したケースはないが、学生からは好評だったという。
両社とも性別や人種、障害を多様性(ダイバーシティ)の一環と位置づけている。日本IBMの担当者は「誇りを持って仕事ができるようになり、生産効率も上がる」と話す。
日本企業でも電通が11年に「ダイバーシティラボ」を設立し、LGBTを知ってもらうためのリーフレット作成などに取り組んでいる。
4月下旬、東京であったLGBTのイベント「東京レインボープライド」には、自動車メーカーや外資系金融機関など多くの企業がブースを設け、理解を示す自社の姿勢をアピールした。
LGBTの人が中心になって設立し、就職活動の支援もするNPO「グッド・エイジング・エールズ」代表の松中権さん(37)は「ここ1、2年、対応を検討し始めた企業が少しずつ増えている」と分析。自らも大手企業に勤め、ゲイを公表している。
とはいえ、日本では同性婚など法律や制度の壁は厚い。松中さんは「企業が動くことで、社会が変わるきっかけになれば」と話している。